この頃は、体の不調だけでなく、
内面にも変化が現れ始めていた。
少し時系列は前後するが、この時期に
感じていた心の変化について書いてみたい。
これまでの自分ではないような感覚
頭に浮かんだことを、
そのまま口に出してしまうことが増えていた。
特に、言い方を調整してから伝えるような内容
――たとえば他人への指摘――なども、
以前より抑えが効きにくくなっていた。
普段の私は慎重なタイプで、たいていのことは、
一度考えてから話すような人間だ。
相手が批判されたと受け取りそうなことに関しては
特に慎重に伝えるようにしていた。
その用意周到さが、なくなってしまい
どストレートに言ってしまったり
本音を隠さず言ってしまう時があった。
言うというよりも、
瞬間的な反応をしてしまう感覚だ。
本音で生きることは良いのかもしれないが
支配的な言い方をしていると、
後悔することもあった。
忍耐力が落ちている
さらに、以前よりも感情的になりやすく、
我慢ができなかったり、
人に譲る余裕がなくなった。
ちょっとしたことで強く反応してしまう。
たとえば、車の運転中も、
無謀な危険運転に巻き込まれそうになると
ものすごい形相をして、
車内で叫んでいる自分に驚いたことがあった。
元々、危険運転には腹が立つタイプだが、
それでもこの頃の反応の強さには自分でも驚いた。
それでも、
この頃の反応の強さには、自分でも驚いた。
また、狭い通路で人とすれ違う時も、
譲りたくない気持ちが強く出る。
人の話をじっくり聞くのもまどろっこしく感じ、
かなりの忍耐力が必要だった。
話し終わる前に遮りたくなることもあった。
人の話を聴くのが苦しすぎる
忍耐力とは別の問題で、症状が進むにつれて、
人の話を聴けなくなっていた。
メンタルが疲れているというより、
体がしんどかった。
話を聴いているだけで、
交感神経が優位になったような緊張感が出てくる。
ひどい時は、気が遠くなりそうになった。
ただ、一度だけ例外があった。
ある日、心を許せる知人と電話で話した。
私の体調不良を相談したのだが
すぐに息が詰まるように苦しくなった。
「わ、無理かも」と思いながらも言い出せず、
そのまま会話を続けた。
1時間ほど話したと思うし、
少し専門的な内容もあった。
それなのに、途中から少し楽になった。
なぜその時だけ話せたのかは分からない。
相手との関係性だったのかもしれないし、
苦しいまま続けたことで慣れたのかもしれない。
ただ、その後もしばらくは、
人の話を聴くことが苦しい状態が続いた。
家族の声さえつらかった
その頃は、
家族が話しかけてくるだけでも疲れを感じていた。
話しかけられると、
内容を理解して返事をしなければならない。
そのこと自体が負担だった。
家族同士が少し大きめの声で会話しているだけでも、
怒鳴り合っているように感じることがあった。
実際には怒鳴っているわけではなく、
以前なら何も感じなかった状況だ。
ただ、耳に響き、聴いているだけで苦しくなった。
動悸がしそうな感覚や、
意識が遠のきそうな感覚になる。
そうならないように、声を小さくしてもらったが、
それでもダメなしんどい時があるので、
耳栓をして過ごしていた。
普段なら聞き流しているような音まで、
一つひとつ意識して聞いているような感覚だった。
決して聞こうとしているわけではないが
全ての音が感度よく入ってくる状態だった。
人の会話も自然に耳に入るのではなく、
一語一語を処理しながら聞いていたのか、
とても疲れた。
話すことも苦しかった
この後ぐらいから、
言葉を発するのも苦しくなってきた。
なぜか話すと息切れがして苦しくなる。
嫌だと
思っているわけではないのに、息が続かない。
本当に「意味が分からない」「なんなんだこれは」と混乱した。
けったいな症状やな、と何度も思った。
人の話を聴きたくなくなった
体がついていかない状態が続くうちに、
少しずつ心の方にも変化が出てきた。
人の話を聴けない状態になって初めて、
これまでの自分は人の話を聴きすぎていたのかもしれない、と思うようになった。
人の話を聴くことは好きだった。
けれど、誰かの気持ちを受け止めたり、
考えたりする余裕が残っていない。
そして、それまでの自分のあり方から
少し距離を取りたい気持ちも出てきた。
人の話を聴くことは、
自分の仕事や生き方にも関わる部分だった。
だから、それができなくなった時は、
自分が積み上げてきたものまで失ってしまうような、自分自身の土台が揺らぐような感覚があった。
だが同時に、話を聴きたくないと思うようになったことに関して、実は、
少しほっとした部分もあった。
たぶん症状がつらすぎたからだと、今は思う。
心の病気なのか
周囲から見れば、
うつ病などの精神的な問題に見えたかもしれない。
実際、家の人は陰で
「うつ病になった」と言っていたらしい。
ただ、自分の感覚としては少し違っていた。
確かに不安や落ち込みもあったが、
それは体の不調が続く中で
後から強くなっていったように感じていた。
当時は、まず体の異変があり、
その影響で心も弱っていったように思っていた。
そして、今振り返ると、精神的な問題というより、
体の不調によって脳が処理できる量そのものが
減っていたようにも思う。
この経験を通して、
精神的な問題だと思っていたものの中には、
体調不良や脳の疲労が影響している場合も
あるのかもしれない、と感じた。
抑えてきた本当の自分が
出てきたのか?
こういった心の変化は、体調不良の影響だったのか、
それとも元々持っていた気質が表面に出やすくなったのかは分からない。
ただ、これまでの自分とは少し違う状態に
なっていたのは確かだった。
忍耐力や認知的な余裕が
落ちているような感覚があった。
ちょうど目の上あたりや後頭部の痛みも続いていたため、頭が働いていないような感覚もあった。
当時も今も原因が分からないが
ただ、今振り返ると、
体の不調は思っていた以上に
心や認知機能にも影響していたのだと思う。
性格が変わってしまったのではなく、
体の不調によって、
心や脳に余裕がなくなっていただけ
だったのかもしれない。
今振り返ると、そんなふうにも思う。
